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■第67回 正倉院 35 筆 (中倉37筆 第10号)調査当時に感動して作った筆
正倉院宝物筆18本の筆の毛質の解明を平成21年から開始されました。18本を見ていまして、中倉37筆第10号、この筆は自然の軸に筆鋒が管込みされていまして、飾りもなく実用に使われていたように思われました。1300年も経た歴史を感じない、現在もつかわれているように、感動しまして、現在ある材料で造りました。
筆鋒の毛質は中国産の兎毛、兎毛の中の紫毫の上質、和紙は鳥取市青谷産、竹は古い斑文竹がないので、古い煤竹を使いました。
筆鋒の構造は三営成筆の巻筆である。第1営(芯毛)、精選した紫毫を3mm、糸で巻き縛りとめ、穂先6~7mmの下から和紙を強く螺旋状に巻く。筆鋒の形を考慮して巻く。第2営は命毛より下に和紙の上に兎毛の紫毫をきれいに平目にして第1営に巻く。そして、巻いた紫毫の上から和紙を螺旋状に巻く。
第3営(化粧毛)をきれいに平目して丁寧に巻く。最後に筆
■第67回正倉院展 35 中倉 筆 (中倉37 筆 第10号)
①筆の外観 管長17,2㎝ 管径2,4cm 筆、帽ともに装飾のない実用本位の筆。筆鋒の毛はかなり残っているが、先端部は欠けている。第3営(化粧毛)の一部が欠失し、ささくれている。この箇所は帽が当たりやすく、摩擦による損傷と思われる。筆鋒の毛質は細く、真っ直ぐで、毛色は黒色や茶色である。筆全体に墨が付着し、管口付近の斑文表面にも付着している。筆を手に持った感じの重さは思ったよりは軽く、中字用筆と思われる。
②筆鋒の構造 筆は3段構造の三営成筆である。筆鋒の内部構造は、第1営(芯毛)を糸で縛り、一段目巻紙を巻き、第2営を命毛より少し控えて巻き、糸を巻き、2段目巻紙を巻き、第3営(化粧毛)を巻く。最後に筆鋒の根元を糸で縛り、管込する。第9号、10号、第12号と同じ造りである。第2 段目巻紙は、湾曲部では小口が2重に折り返してあるが、竹管口付近では折り返しが見当たら
■第67回 正倉院展 34 中倉 筆 (中倉37 筆 第4号)
①筆の外観 管長22,3㎝ 管径2,0㎝ この巻筆は腰高の紡錘形である。鋒先の 先端が細く、中鋒形である。他の巻筆と形が異なり、製作年代は新しいように思われる。筆の造りが雑である。命毛は少し擦り減っている。墨は先端に沢山付着しており、筆の根元付近まで染み込んでいる。そのためか筆根元が膨らんでいる。筆管の差し込み口は薄く削って、筆穂を管込みしてあり、 雀頭筆に共通の加工である。
②筆鋒の構造 筆は3段構造の三営成筆である。筆鋒の内部構造は第1営(芯毛)を糸で数カ所を縛り、1段目巻紙を巻き、第2営を巻き、2段目巻紙を巻き、第3営(化粧毛)を巻く。最後に筆穂の根元を糸で堅く縛り、竹管に管込みする。
③筆毛の材質 第1営(芯毛)に墨が付着しており、外見からは判定できないが、軟x線透視画像による芯毛の形状が、寸胴形であることから、鹿毛又は馬毛と推定した。第2
■第67回正倉院展 33 中倉 筆 (中倉37 筆 第1号 )
①筆の外観 管長20,4cm、管径2,2㎝ 筆鋒の各営は完全に消失しており、巻紙や竹管との間に残毛があるだけである。穂先は欠失しているが、残毛の小口の観察から、細微な良質な毛と推測する。墨は第1営(芯毛)から2段目巻紙の中程にかけて付着している。
②筆鋒の構造 筆は3段構造の三営成筆である。筆鋒の内部構造は第1営(芯毛)を糸で数カ所しばり、1段目巻紙を巻き、糸を巻き、第2営を巻き、糸を巻き、第三営(化粧毛)を巻き、筆穂の根元は格段の巻き紙を絞ってまとめている。最後に筆穂の根元を糸で絞り、竹管に管込する。紙巻きは螺旋状に左巻きである。
③筆毛の材質 第1営(芯毛)は擦り切れた残留しており、太い毛と細い毛茶色系の毛が混在している。狸毛と判定している。第2営は狸毛と推定する。第3営(化粧毛)は筆管と2段目巻紙の間の奥深い所に残毛が認められるが、観察が
■正倉院宝物の筆はすべて紙巻仕立ての巻き筆
紙仕立ての巻き筆の構造は中心の毛(芯毛)の腰部分を和紙で巻き、さらに毛で巻き、これを繰り返し、一番外側に毛を巻いて、その根元を糸で 縛り、竹管に差し込む。
巻筆の部位の名称は、芯毛、巻毛、巻紙、これらを全体を筆穂、竹管から出ている筆穂を筆鋒と言い、その尖端部分を穂先あるいは命毛とも呼ぶ。一番外側の巻毛を化粧毛と言う。筆鋒の出とは、毛のない状態の巻紙のことを指し、腰と腹に区分する。腰丈は一番外側の巻紙の丈に相当し、腰丈は筆鋒の出から腰丈を引いた寸法である。腹と腰の比率により、腰の高低を表す。
紙巻仕立の5段構造の巻筆を古式に従って表記すると「五営成筆」と言い、その筆穂の構造と部位の呼称を図に示す。
この古式「五営成筆」の製筆法はまず 、第1営(芯毛)は筆鋒の命毛となるので、細微優良な毛を使用し、揃えて、麻糸で縛り、先端部分を残して和紙の薄書院紙(1段目巻紙)
■正倉院宝物の収蔵から見た筆の流れを見てみました。
正倉院には聖武天皇(701~759)ゆかりの美術工芸品や生活用品が多数収蔵されている。それらの中に、書の道具(文房至宝)、文房具などがあります。その「文房四宝の筆」を見てみます。
漢字が日本にもたらされたのは、後漢光武帝から奴国王が授かった金印「漢倭奴国王」や 前期古墳時代に埋葬された中国鏡の銘文などから、1世紀から5世紀頃と考えられる。
720年に編纂された「日本書記」の応神15,16年(404、405年)条に、百済からの使者が 経や諸々の典籍をもたらし、教えたとあることから、この時に漢字が朝廷公認の形で受け入れられたと考えられる。
また、推古18年(610年)条に、高句麗の僧が絵具・紙・墨の製法を伝えたとあり、同時代に筆の製法も伝えられたと思われる。
正倉院古文書の伊豆国正帳には、筆と墨の製造の料として租稲が充てられたことが記されている。空海(7
■正倉院の毛の調査の時に天平筆をまねて製造!
正倉院には聖武天皇(701~759)ゆかりの美術工芸品や生活用品が多数収蔵されている。それらの中の宝物に用いられた動物の毛について、2009~2012年に調査しました。
第67回正倉院展にはフェルトの敷物「花氈」、うちわのような仏具「柿柄愁眉」、伎楽面「力士」筆は3̠本出陳されます。
その時に、西の宝物の倉庫に入りまして、1300年前の筆を目の前にして、大大感動しました。
手は震え、声も大きくなる。その日半日は興奮していました。その感動が調査も終えて熊野に帰りました。その感動をエネルギーにして、自然に見たまま、兎の毛で紙を巻いて造ってみました。
兎の毛の材料も倉庫にありましたので、材料は豊富に使えました。
奈良時代の正倉院宝物の毛の調査から、筆18本を専門家の目からの調査、科学的な目からの調査をしてきました。当時、使われてい
■特別製造の墨象筆(白天尾 )納品できました。
墨象筆の毛は北米産の馬の尾、軸は短軸変形木ダルマで作っています。
墨象筆の軸を作る職人さんは歳で、数年前に作るのをやめましたが、その時に数本をお願いしました軸を使用しています。
この軸の特長は木ダルマの内側に水道のパイプ使用することにより軸の割れを防止しています。
軸は松の木、切り出して数年間乾燥したものを加工しています。
この墨象筆の穂の寸法は内径80mmx250mm、軸の全長は350mm。
作品は約150mmx180mmの紙に1字~2字を書きます。
私も何度か墨象筆を使っている会場に行きました。皆さん、体育館のような場所で書いています。
1枚書くにも、準備は墨液作りから、会場場所の墨を散らかさないようにシートを張り、乾燥の場所の準備など。
墨象筆に墨液を含ませて書く場合は数キロの重さになってしましますので、一気に書き上げます。
紙が大きいですから、
■第81回筆まつり 9月23日 筆供養と筆の市
【筆供養】
筆供養は榊山神社境内の筆塚の前でおこなわれています。当日は終日行事です。
筆塚は筆の精祖先の遺徳に対する感謝を込めて、昭和40年9月に建立され、その塚底には時の名筆司達による名筆が永久保存されています。
筆の働きの作用に霊能を感じ、筆にもまた筆精ありとして用済みの筆を浄火に投じます。
筆毛の提供者である動物の諸霊に感謝に感謝して筆供養がおこなわれます。
筆供養の祭典は全国の書道の愛好家が使用済みとなった筆に対し、今日まで書道を支えてくれたことに感謝し、書道の上達を祈りつつ、そして筆にかかわる日本文化の継承、明日への発展を祈念しながら丁重かつ厳かに永代供養するものです。
【筆の市】
熊野町の伝統的工芸品熊野筆の製造業者が筆の市に出店しています。当日は熊野筆の書道筆数千種類の筆、絵の筆、日本画の筆、特別製造の筆、化粧筆等の熊野筆が販売されています。価格も3
■第81回筆まつり 9月23日熊野町
【筆供養】 全国から毛筆が使われて筆の使命を終えた用済みの毛筆たちが送られてきます。熊野筆の生産地から出て行って帰ってきます毛筆です。その筆たちに、お疲れさまでした。ありがとうございましたと毛筆の供養を筆塚の前で筆供養がおこなわれます。当日にもたくさんの筆を持ってきて供養をしています。
私たち職人も毛筆の製造、筆の働きに霊能を時に感じて、毛筆に使われています動物の諸霊に感謝し、供養しています。
【大作席書】特大筆を用いて大書きします。特別製造の白の紙、ではなく現在は白い布、縦10メートル、横7メートルに日展書道作家によって書かれています。
【競書大会】奉納競書、小学中学生が筆塚前の舞台で自由参加でおこなわれて、掛け軸にして作品にしても落ち帰ります。
【筆の市】当日一日限りの筆の販売をおこないます。熊野町内の毛筆、絵筆、化粧筆の製造業者が筆の屋台に筆を並べ