正倉院宝物の筆はすべて紙巻仕立ての巻き筆

紙仕立ての巻き筆の構造は中心の毛(芯毛)の腰部分を和紙で巻き、さらに毛で巻き、これを繰り返し、一番外側に毛を巻いて、その根元を糸で 縛り、竹管に差し込む。

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巻筆の部位の名称は、芯毛、巻毛、巻紙、これらを全体を筆穂、竹管から出ている筆穂を筆鋒と言い、その尖端部分を穂先あるいは命毛とも呼ぶ。一番外側の巻毛を化粧毛と言う。筆鋒の出とは、毛のない状態の巻紙のことを指し、腰と腹に区分する。腰丈は一番外側の巻紙の丈に相当し、腰丈は筆鋒の出から腰丈を引いた寸法である。腹と腰の比率により、腰の高低を表す。

紙巻仕立の5段構造の巻筆を古式に従って表記すると「五営成筆」と言い、その筆穂の構造と部位の呼称を図に示す。

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この古式「五営成筆」の製筆法はまず 、第1営(芯毛)は筆鋒の命毛となるので、細微優良な毛を使用し、揃えて、麻糸で縛り、先端部分を残して和紙の薄書院紙(1段目巻紙)を巻く。第2営(護心)は縮みや曲がりのない、やや長い毛を芯毛より少し下に巻きつけ、その上から和紙(2段目巻紙)を巻く。第3営(充腹)は芯毛と腹部との中間に墨液を含ませるたために、第2営との間を多く控えて毛を巻き、和紙を巻く。第4営(装)は第3営の毛が跳ね出るのを防ぐために、芯毛と同じ長さの毛を巻きつけて、和紙(4段目巻紙)を巻く。第5営(化粧毛)は細微で綺麗な毛で巻いて被覆し、根元を糸で巻く。こうして造った筆鋒を竹管に差し込んで取り付ける。

kenzo
筆匠 健蔵広島県の瀬戸内海から山間に10Km余り上った盆地にあります。熊野町で筆作りをしています。
熊野筆町で作られている伝統的な工芸品熊野筆は江戸時代からの伝統の技が伝えられています。

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