第67回 正倉院展 34 中倉 筆 (中倉37 筆 第4号)

①筆の外観    管長22,3㎝   管径2,0㎝    この巻筆は腰高の紡錘形である。鋒先の 先端が細く、中鋒形である。他の巻筆と形が異なり、製作年代は新しいように思われる。筆の造りが雑である。命毛は少し擦り減っている。墨は先端に沢山付着しており、筆の根元付近まで染み込んでいる。そのためか筆根元が膨らんでいる。筆管の差し込み口は薄く削って、筆穂を管込みしてあり、 雀頭筆に共通の加工である。

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②筆鋒の構造   筆は3段構造の三営成筆である。筆鋒の内部構造は第1営(芯毛)を糸で数カ所を縛り、1段目巻紙を巻き、第2営を巻き、2段目巻紙を巻き、第3営(化粧毛)を巻く。最後に筆穂の根元を糸で堅く縛り、竹管に管込みする。

③筆毛の材質  第1営(芯毛)に墨が付着しており、外見からは判定できないが、軟x線透視画像による芯毛の形状が、寸胴形であることから、鹿毛又は馬毛と推定した。第2営は毛に覆われているため、判定できなかった。第3営(化粧毛)は茶色の毛と白い太い毛が混在している。茶色の毛は少しカールしており、その毛皮紋理は横行波状及び山形状を示し、毛髄質は厚く、狸毛の刺毛及び中間毛に近い。一方、白くて太い毛は毛内部のスポンジ状の毛髄質が毛表面に現れ、鹿毛と判定した。

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竹管の材質はトウチクの属とされ、雲文の中の圏文の入った斑文が散る。また筆管の先端は内側を薄く削り、穂先を挿し込やすくしている。管尾に象牙を轆轤挽きして作った塔形の飾りを付すが、「33中倉筆」のそれに比較するとやや簡略な形状である。帽は薄作りで、ハチクの割竹を12本(内8本は新補)用い、口にツゲと銀の覆輪をめぐらす。帽頭のシタン 製の飾りは新補。

 

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筆匠 健蔵広島県の瀬戸内海から山間に10Km余り上った盆地にあります。熊野町で筆作りをしています。
熊野筆町で作られている伝統的な工芸品熊野筆は江戸時代からの伝統の技が伝えられています。

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