①筆の外観 管長22,3㎝ 管径2,0㎝ この巻筆は腰高の紡錘形である。鋒先の 先端が細く、中鋒形である。他の巻筆と形が異なり、製作年代は新しいように思われる。筆の造りが雑である。命毛は少し擦り減っている。墨は先端に沢山付着しており、筆の根元付近まで染み込んでいる。そのためか筆根元が膨らんでいる。筆管の差し込み口は薄く削って、筆穂を管込みしてあり、 雀頭筆に共通の加工である。
②筆鋒の構造 筆は3段構造の三営成筆である。筆鋒の内部構造は第1営(芯毛)を糸で数カ所を縛り、1段目巻紙を巻き、第2営を巻き、2段目巻紙を巻き、第3営(化粧毛)を巻く。最後に筆穂の根元を糸で堅く縛り、竹管に管込みする。
③筆毛の材質 第1営(芯毛)に墨が付着しており、外見からは判定できないが、軟x線透視画像による芯毛の形状が、寸胴形であることから、鹿毛又は馬毛と推定した。第2営は毛に覆われているため、判定できなかった。第3営(化粧毛)は茶色の毛と白い太い毛が混在している。茶色の毛は少しカールしており、その毛皮紋理は横行波状及び山形状を示し、毛髄質は厚く、狸毛の刺毛及び中間毛に近い。一方、白くて太い毛は毛内部のスポンジ状の毛髄質が毛表面に現れ、鹿毛と判定した。
竹管の材質はトウチクの属とされ、雲文の中の圏文の入った斑文が散る。また筆管の先端は内側を薄く削り、穂先を挿し込やすくしている。管尾に象牙を轆轤挽きして作った塔形の飾りを付すが、「33中倉筆」のそれに比較するとやや簡略な形状である。帽は薄作りで、ハチクの割竹を12本(内8本は新補)用い、口にツゲと銀の覆輪をめぐらす。帽頭のシタン 製の飾りは新補。